高倉雄造さん(ボタン・アコーディオン)

 アイリッシュ音楽。ボタン・アコーディオン奏者として、
「Cuchulainn(クーカラン)」等でユニット活動あり。

 歴代ライブハウスの名店であり、スープカレー激辛批評(樺沢氏の)、
スープカレーポータル等のサイトで評価の高い">「jack in the box」の店主。

 いや〜、お店に誰もいない時に行くと、一人で練習している店主高倉さんの演奏を、そのまま聞き続けたいやら、小腹がすいて、
名物のカレーが食べたいやら、嬉しい迷い。(はは)

2006年11月

 今日はフランス居酒屋「ガンゲット・ダイマ」というお店での、
高倉さんのライブ。張り切ってGo。

 相方はHard to findの星直樹さん。
私の大好きな、アイリッシュ音楽のダンス音楽中心のライブ。
(嬉ちぃ)

 びっしりの会場、そして本当に雰囲気の良い、楽しいライブでした。
 ボタン・アコーディオンのアイリッシュ音楽。高倉さんの演奏も、
しっくりと素敵でした。

ボタンアコーディオンを弾き始めたのは、七年前の1998年から。
ソロとしては自分のお店で一回、そして人様のお店では今回が初めて!!

 ご本人もご自身で「初心者」とおっしゃるだけあって、
演奏は良くても、ひどい緊張ぶり
 
 会場に詰めかけた、すでに場数を踏んでスレている他の先輩音楽仲間
の方々達に、愛のこもった野次を、飛ばされていました。

(客席も、初物を頂く、というカンジの良さが……はは)

 で最初の一曲目「Cul Aodh jig ・ Blue Angel」、
特に良かったです!とても。
 この曲はそんなに緊張なかった気がする。
「お店の人」としてでなく、今夜は自分のライブ。
その気持ちのHANA(華)やぎが、演奏に出ていましたね。   
ちょっと派手っちぃ演奏。客席の私にも伝わった。

 普段と違う目を引く色彩のシャツもプロのけじめを感じて良かった。

 やはり沢山ライブを見守っているだけあって、
ライブハウスにしっくりなじむ演奏の仕方を心得ている気がしましたし、
同様に曲間のトークの面白さは出色でしたね。
(さすが、ライブハウスのマスター)。

 又「Lyrch’Barn Dances」が良かったです。
テクも効いていたカンジ。
 私はダンス音楽が、ダンサーなしで演奏され、楽器演奏自体が
踊るかのように、エネルギーを強めている感じの時の音楽に目がないです。
 でもダンサーと一緒の時は、それはそれで別の、
コラボの良さがありますし、又ダンサーメインの時は、
それはそれで又得も言われず素晴らしいですね。
 要するに、一度に両方楽しめないのでしょうか。

 この曲の演奏も、踊っていた気がして、好きでした。

 そして、感動したのが「ブラック・バード」という曲。すごく良かった。
今まで主に演奏歴の長い方のライブばかり聴いていたのですが、
「感動」は演奏歴だけによるものでない、と思わされました。

 私は専門的なことは分からないのですが、この演奏のとき、
高倉さんも穏やかだった気がします。
 そして、演奏者の技量と曲の難易度が釣り合ったものであるとき、自分のすべてを注き込めたなら、演奏歴が長くなくても、無理なく客席の心を動かすことが出来るのだと思いました。

 あれですね、料理に例えると、トマト系の味は、
長時間煮込むと重厚で美味しいけど、
料理によっては短時間であっさり酸味残した方が、
いい味な時があるのと似てるかも。
 この「ブラック・バード」は本当に素晴らしかったです。

 ちょっと笑えたのは、名店「ジャック(通称)」のマスターとして、
数限りないライブを見守ってきた高倉さん。
今日は自分が主役演奏、何やら一ヶ月前から緊張状態だったそうですが、
実際当日舞台に上がると、高倉さんは
何となく緊張するのに慣れていない様子。

 ジャックを貸し切る他の沢山のミュージシャン達のライブを、
店主として落ち着きはらって見守る時のように、
顔だけはポーカーフェイスのまま。でも心持ち顔色青く、
手や足や頭が緊張してる気が。

 反して同じく上がり性だという、伴奏の星直樹さん。
彼は逆で、上がるの慣れているカンジ。場数を踏んでいいますから、
顔を純情に赤くしながら、指や足は全然平気っていうカンジ。
そもそも星さんは、ひと月前から、高倉さんが「緊張する、緊張する」と
何度も言うので、星さんまで動揺したカンジ(被害者ですね)。

でも、こういう状態もいずれ場数を踏むと見れなくなりますから、
何というか、これはこれで楽しめる舞台でした。

(ちなみに客席はお気楽に、「緊張してるぅ〜」何て笑っていますが、
自分が逆の立場になったら、絶対深刻ですから) 

 舞台って逃げ場がない上に、
魔が宿るみたいな(?)コワイ場所でもありますから。

(だから、魅きつけられるのでしょうか。演奏者も客席も。
ほんの少し高くなっていたり、会場によっては同じ床の延長線にある、
最前列の客席の前にあるちょっとした、スペースというだけなのですが)
 
 高倉さんのアイリッシュ音楽の独特の良さは、物哀しく響かない所です。(別な人の場合は、物哀しいのが良いこともあるのですが)
日向のような温か味、安らぎがあること。

 何となく、アメリカに渡ったアイルランド人の移民という訳でないですが、アイリッシュ音楽が日本の東区16条界隈に来ると….というカンジ。

(何か他の所はともかく、「ジャック」という歴代、ミュージシャン達の因縁のあるお店は、存在感、影響力がその演奏にも及んでいくるのでしょうか?)
 つまり高倉さんはご自身として、ちゃんとアイルランド音楽を掴んでいるだと思いました。

 沢山の諸外国の文化と融合して各国の「民族音楽」は
出来上がってきていますから、これはこれでまた良いことなのだと
思いました。

 淡々とボタン・アコーディオンに空気を送り込む右手が、
まるで日常を静かに漕いでいく、ゆっくりとした車輪のように感じました。

 全般的に楽しめる、素敵なライブでした。
数曲だけ、演奏間違ったのもありましたが、
別にライブの楽しさは損なわれなかったし、

その時でさえ「もつれる指と、座った肝」という「店主・高倉」の
キャラを感じられて、先々楽しみな気がしました。

 今でも十分上手いし、お店もカレーもあるけど、
コツコツ練習していれば、必ず実っていくのだと教えられました。
 この日初めて、カレーでなく音楽のファンとなった私も、
演奏が先々楽しみに思えて、満足したのでした。

(C)