HtFの「モリソンズジグ」というアイルランドのダンスチューンの演奏のときでした。
 
 音楽はいろんなことを想起させますが、この鉄壁のチームワークの彼らの演奏の背景に、
私は走馬灯のようにぼんやりとさまざまな情景が浮かんだのでした。
(その日たまたま私はとても疲れていました。妄想でしょうか?)
 これは多分曲が初めて作曲されてから、
ずーっと人々の間で弾き継がれて来た曲なのだと思いました。

 いつからなのか分からないけど、その昔のアイルランドかどこか村や町の様子が
何となく演奏によって浮かび上がって(自分勝手な妄想ですが、それくらい情景喚起力がある
素晴らしい演奏でした)
       
 「村に赤ちゃんが生まれて、大きくなって、学校行ったり、友達とケンカして仲直りしたり、
就職したり、結婚したり、別れたりまた出会ったり、
家のリンゴ酒の樽がすごく上出来の年があったり、
 
 おじいさんのお葬式とか、孫の誕生とか、大豊作とか、選挙とか、バザーとか、
毎年来る旅の一座とか、水害とか、長男が村を出て行ったり、10年後戻ってき
たり、末娘が懸賞に当てて自転車を手に入れたり、
 
 繰り返し繰り返し、年月が経つごとにちょとづつ服装が近代化したり紡績工場
が出来たり、飛行機が発明されたりしても、この曲は変わらなくて。
             
 そういう気の遠くなるような長い年月の間、村や町のお祭りや、酒場や、学校
やそういうところでことあるごとに繰り返し演奏され続けて、人々の頭のどこ
かで、この曲はずーっと鳴り続けていたのかなぁ、と。」

 このときだけでなく、絶好調の時にこういうタイプの乗りに演奏がなったとき、    
彼らはこういう味わいを今も私達に披露してくれます。


  

     


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