編集Aのいろいろ雑記(主に映画や本をきっかけに思ったこと、又は感想)
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【本読んだ話】 

@「ディブ・ペルサーの著作」と「愛を乞う人」

A「アルジャーノに花束を」と「ある日本の小説」

B「刑務所のリタ・ヘイワース」を読み終えた、素晴らしかった時のこと

【映画観た話】
     --評判の悪い映画特集--   

@「ショーガール」と「パリ、18区、夜」に学ぶ汚職の不思議

A「だいじょうぶ、マイフレンド」は面白い映画だったし、広田玲央奈はとても素敵だった

B封切り時、日本では大不評 「G.Iジェーン」 (BとCは内容つながってます)

C映画「レニ」  レニ・リーフエンシュタールの過ちは何だったのだろう (BとCは内容つながってます)

D 「追悼レスリー・チャン」 ((News letter vol.3 2004年6月26日発行)
E映画「モンスター」他からの頂きもの「不幸な過去を乗り越えるためのポイント」

F映画「紅夢」 − どんな女なら上手くいくのか? (News letter vol.10 2007年8月31日発行)

G「何の主義なら上手くいくのか?」((News letter vol.13 2009年2月22日発行)
    −映画「チェ 28歳の革命」「チェ 39歳別れの手紙」を観て−


【本読んだ話】 

@「ディブ・ペルサーの著作」と「愛を乞う人」

 「ITと呼ばれた子」という本で有名になった、
全米児童虐待ワースト3に入る虐待児ディヴ・ペルサー。
彼の生育歴等を綴った、一連のシリーズのうち子供時代を書いた最初の二冊を
私は辛くて恐ろしくて、いくじがなくて読めなかった。
 最初に読んだのは彼が成人してからの視点で書いたエッセイ「許す勇気、生きる力」
それから助け出されてからの生育歴の「ディブ」でした。

 特に前者は一生の読書のうちで最良の体験の一つだったと思います。
 彼は彼の家族による虐待、それからその心身の後遺症から逃れるために
全身全霊の力で「自分」と闘ってきたこと、そしてこれから先もそれを続けることを
心に決めて生きている人です。「真の英雄」とは彼のことだと思いました。

 これとその前に読んでいた、
映画化された日本の小説で「愛を乞う人」というのが彼の話と少し似ていました。

 この物語の児童虐待を受けて育った女性は、
「虐待児はやがて大人になると自分の子供を虐待する」という、
心理学等の一般通説を超えて、成人してから自分の子供を優しく愛情深く育てることで
逆に癒されていきました。

 (ディブ・ペルサーも自分の妻子と優しい愛情深い誠実な関係を結んでいます)

 私はこの「愛を乞う人」を読んだとき、巷の文学的評価はともかく
この小説は「日本文学の金字塔」だと思いました。

A「アルジャーノンに花束を」と「ある日本の小説」

 「アルジャーノンに花束を」は世界の大ベストセラーであり、SFの手法を用いた偉大な文学であり、
世界中の絶賛、高い評価に異論はぜんぜんないです。
 自分と比べるのもなんですが、こんな素晴らしい文章を私は全然書けないし足元にも及びません。
 
 でも私が20代前半頃、そういう高い評価を知らずに偶然この本を初めて読んだ時、
著者ダニエル・キースについて思ったことが今と変わっていないのです。

 初めて読んだ時、私はこれを「オカルト小説」だと思いました。
 アメリカの教師ダニエル・キースが、同業出身の大作家スティーブン・キングを目指し
教師生命をもかけた気鋭のデビュー作。

 でも実際はオカルト扱いではなく、
 キースは世界の大ベストセラー作家であり、文学としても最高の高い評価を得続けています。
 それに比べると日本文学のちょっと似た話、
「家畜人ヤプー」にはさほどの評価はなかったようでした。
(なぜ私はこんな小説を知っているんだらう)

B「刑務所のリタ・ヘイワース」を読み終えた、素晴らしかった時のこと

 この短編はのちに「ショーンシャンクの空に」という映画になりましたが、
私が小説を読んだのは、映画公開の6年位前です。
 映画は素晴らしかったですが、
この時のような気持ちには、キングの淡々とした原作の方が染み込むかもしれない。

 誰にでも大人でも子供でも、生きていると辛くて死にそうな気持ちの時があると思います。
 他人からみると大したことではなかったり、
自分でも後から振り返ると昔話になっているのに、その時は・・・・というような。

 私にとってのそういう時(恥ずかしながら)、たまたま偶然予備知識もなしに読んだ小説でした。

 キングには珍しい、オカルトでない普通の文学です。

 無実の罪で殺人犯として刑務所に入れられた主人公。
 有名な古典「巌窟王」を始め”脱獄もの”の小説は結構あります。
でも読んだ時期が良かったのか、これが一番心に染みた作品でした。

 何だったかよく覚えていませんが、この主人公と状況は似ても似つかないことながら
嫌なことがあったときでした。
 
 「この主人公アンディに比べたら、私は幸せだ」
そう思ったら、自分も立ち直ろうと思えたから。

 これは「自分より不幸な人の話」を読んだからそう思えたのではないです。
 又「スーパーマンのようにとても強くて知恵の働く人」に主人公が書かれていたからでもないです。

 この主人公がどんなひどい状況でも、心の中で他人に対して自分に対して
良い人間性や前向きな心を失うまいとして生きてきたからですね。

(もしこれが私ならこんなことは全然出来ないですが、この小説はフィクションなのに
 それ以上のリアルな影響力を感じさせました)

 別に道徳というかお説教めいた小説では全然ないですし、
ただ心の中のぎりぎりの所で人が「最後まで持ち続けようとした何か」のことを描いただけの
物語だと思った。

 これはキングの話題作「ゴールデン・ボーイ」の短編集の中に一緒に入っていた作品でした。
 何気なく予備知識なしに表題作のついでに読んだのですが、素晴らしかったですね。。
 
 大抵の人の一生のうちに何度か起こる偶然の、本との幸福な出会い、
その本をたまたま引き寄せた自分の「その時のカンの良さ」(はは)に感謝するような
出会いがありますよね。(映画や音楽でも何でも)

 多分人が無意識に必要なものを探しているので、
そういうことが起きるのかもしれないですね。

 落ち込むようなことがあっても、ひねくれないで生きていこう。(え?ひねくれてるって?)
そう思えたというのは、これが偉大な小説だからだと思った。

 人がどう思うとかに関わらず、自分にとってそう思える、良いものと沢山出会っていけるのも
長生きの楽しみだと思いました。

 一般に、不条理なことがなかったり、あまり善なる感じがすると文学的な評価が下がる傾向が
現代には多少あると思いますが、
それはともかく、私にとってどん底のとき心のクスリになってくれたのは
こういう強い良い影響のある小説だけだったのでした。

 結構昔からどちらかというと、現代っぽい傾向の小説を好んで読んできたのですが
この頃からちょっと考えが変わってきたような気がします。
(もしかして、年取ったっていうの?)

 スティーヴン・キングさんありがとうございました。

(by 編集A)